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2006年 10月 11日
今回僕が研修を行っている代沢の住宅の現場は、とうとう今週末に引渡しをする予定になっています。建物の内部は徐々に完成に近い状態になっています。内部については後ほどお伝えします。本日は外壁についてです。
この住宅の多くの外壁には下見板とよばれる意匠がついています。今回改修している台所にも下見板がついていました。台所内部の改修の際に出窓を取り払った結果、その外壁に新しい下見板を貼ることになりました。さらに風呂場の開口も大きく様変わりしたので、そこにも同様に下見板を貼ります。(写真は台所の外壁です。寸法の短い板が今回貼ったもの。) 下見板と言っても、これまで自分にとっては本を読んでいるとたまに登場するぐらいのものでした。 写真に見られるように、板を斜めに重ねていき、それを押し縁と呼ばれる縦方向の棒材で留めることになります。 さて、これを実際に貼るにはどうするのでしょうか。釘を打つ位置に関して少し注意すべき点があるそうです。 以前にもこのブログに書いたように、木には伸縮する特性があります。そしてその特性を踏まえたうえで、釘を打つ位置が決まっています。横方向に長く伸びている板材の上方のみを釘で止め、下方には釘を打ちません。上方だけを釘で留め、下方は自由になっています。片方を留めるだけなので、板が伸縮しても決して割れないようになっています。(写真は、釘で板の上方を留めている様子) 椅子の製作の際にも木の伸縮が問題になりましたが、そのときには棒材(イーニッサンと呼ばれる下地材)をガッチリと固める方法をとっていました。今回は逆に、自由にすることで伸縮を許容するという方法でした。 木の伸縮の特性を注意しているだけでも、勉強になることがたくさんあることが分かってきます。 #
by ymsbkf
| 2006-10-11 19:02
2006年 10月 04日
【吉川の鯰】の見積もりは岸本さんがまとめていますが、「どうしても外注費が高くなってしまう。」とよく言っています。できるだけ人件費を抑えて施工できれば、お施主さんの予算を他の部分(材料費など)に割り当てることができます。したがって施工については、可能な限り自分達で行うというのが【吉川の鯰】の姿勢だと思います。
外注に任せないのは、コストの面だけではありませんが。。。 今回は壁の塗装を外注せずに自ら挑戦しています。実はこれが簡単そうに見えて意外と難しい。下地(石膏ボードやベニヤ板)の目地をパテで埋める作業に結構てこずっています。塗装は下地作り(下地をパテでまっすぐにならすこと)が一番重要で、のりづけ(シーラー)とペンキ塗り自体は機械的な作業になります。。 ちなみにパテは「塗る」と言うのではなく、「しごく」と言います。「パテしごき」、確かに実際にやってみると、ただ単に塗っているのではなく、ぐいぐいと塗りこめていかないと上手くいかない。今日になって割りとコツをつかんできました。「木工の仕事だけでなく塗装もできるようになれば、よりいっそう仕事の幅が広がるはず。」という思いで挑んでいます。 ここ二三日はパテをしごいたりならしたりで過ぎていきそうですが。 #
by ymsbkf
| 2006-10-04 19:10
2006年 09月 22日
近頃継続して行っていた、台所部分の天井板の張替えを終えました。今日はその作業についての報告。ちなみに板が黒く見えるのは、カシューという塗料を塗り、仕上げているからです。
基本となる作業は約2000mmと約700mmの長さの板を交互に張り合わせていくというもの。当初はわりと機械的な作業と思っていたがそうでもない。枚数の関係上、板の全長を見ながら注意深く選んだり、板同士が透いているのを直したり、均等に並ぶように調整したり、電気コード用の穴を開けたりと、色々な問題がつきまとっていました。 さて、どうやってこの2000mmもの寸法を計量するか。スケールをあてると、もちろんポキッと折れてしまいます。 このような長い寸法をとりたい時にはバカ定規なるものを使います。まっすぐな下地用の棒材(2000mm強)を直接、寸法を出したい部分にあてて、その棒材に墨付けをする。板材をその長さどおりに切断する。これで2000mmもの板材を切り出すことができます。 やがて午後になって押入れの方をみてみると、いつの間にかこの棒材は天井の下地に成り代わっていました。これにてお役御免です。 もう一つ。 天井板を張ったり、床板を張ったりする際に重要なことが、できるかぎり「逃げ」をつくっておくことだそうです。今回は、板の長手方向の一方に背の高い収納棚が設置されるので、その側には板をピッタリと合わせなくて済むように設計されています。板をばらばらの長さで張っていっても、収納の上部で隠れるようになっています。 これは素早く、きれいに施工することができる、きわめて合理的な方法です。つまり設計の際に常に施工のことを考えていれば、このようにスムーズに現場がはかどっていくことになります。それは床、天井に限らず、下地の時から仕上げまでを通して一貫していえることです。 もちろん、今回が改修ということもあり、全ての仕上げが設計段階で決まるわけではありません(決まっていないことも多い)。解体してみて分かることも特に多い。そういう場合には、現場で作業をしながら仕上げの仕方-例えば天井と壁の収まり等-が決まっていっています。 これらのことから、設計と施工が【吉川の鯰】という同じ頭の中で動いていくことは非常に理にかなっていることだと実感します。施工をしっかりと知らないと、おそらく設計はできないでしょう。今は現場で作業をしていますが、逆の立場で考えると、設計者の苦労は相当なものだと思うこともあります。設計を専門職とする人たちは、どれだけ多くのこと、先のことを、頭の中で思考していないといけないのでしょうか。それを考えただけでもぞっとします。 #
by ymsbkf
| 2006-09-22 21:56
2006年 09月 11日
先週のうちに解体作業は終わり、これからは色々な部材を設置していく作業です。今日の作業は根太と捨て床(床の下地材)を貼ること。一つずつの作業工程に慣れるのが難しく、予想以上に時間がかかりました。
話は変わって、今日のトピックは椅子について。 ついに【焼鳥今井】に配置する椅子の試作品が完成しました。岸本さんと一緒に形を考えて、井坂さんに習いながら施工し、部屋に持って帰ってきて仕上げ。この三週間の間に少しずつ作っていった椅子。予定よりも少し遅くなりましたが、ようやく公開できるようになりました。 この椅子の特徴を説明します。 要望は次のとおりです。 ・できるだけ安価な材料で作ること。 ・できるだけ軽いこと。(前回製作された椅子は全て面材で構成されていたため、少し重かった。) ・メニューを置く場所を設けること。 ・足置きを設けること。 重さの問題などを改良するために、今回は足の部分を棒材にすることになりました。 そこで問題になるのは、その棒材が木目と垂直方向に伸縮するという点です。安価な材料で作ると伸縮は特に激しいそうで、そのことを克服しなければなりません。キーポイントはボックス型にしたメニュー置きと足置き(どちらも合板)です。 伸縮させないための処置は次のとおりです。 ・棒材の上下を固定すること。→メニューを収納するボックスと足置きによって固定する。 ・広い範囲を固定すること。→上側はボックス型なので広範囲を固定できる。 ・伸縮しない材料で固定すること。→足を固定する部材はランバーコアという合板なので、それほど伸縮しない(足の木目方向を固定)。 このように、上に示した問題や要望を上手くまとめた形をしています。 さらにまた、形だけでなく施工も簡単に出来るようになっています。下の写真は仕上げる以前のものですが、これ以降の合板部分の仕上げの工程もそれほど難しいものではありません。黒い和紙とウレタンの塗料を使用しており、丁寧にやれば誰にでもできる作業だと思います。 丸々三週間と、結構時間がかかってしまったのですが、とても面白い椅子ができたのではないかと思います。作っている間にも多くの経験ができ、次の作業にも生かしたいと思います。この一つの椅子に、色々な人の様々な手(や頭脳)がかかっていると感心しています。 #
by ymsbkf
| 2006-09-11 21:19
2006年 09月 05日
昨日に引き続き解体工事です。基本的に解体工事は施工手順の逆に行えば良いそうなのですが、それがなかなか難しいもの。天井のように、裏側があまり見にくい場合は一層のことです。
今日の午後は主に、台所の天井との格闘。最後には井坂さんにも手伝ってもらい、得体の知れないほこりにまみれながらも何とか引き剥がしました。 その天井板の裏側の中央には下地の棒材が取り付いており、なおかつ板の一方が小穴(小さな溝)にはめ込まれていました。したがって、単に板を天井裏へ押せば剥がせるわけではありませんでした。その剥がし方を考えるのも少し困難でした。 さて、天井の構成を確認すると。。。 天井板一枚が、(板の長手方向の)一方が裏から釘で打ち付けられ、中央に下地材が通され、もう一方は小穴にはめ込まれている、という状態で、その板が何枚も張られています。 ではなぜ一方が釘で他方が小穴だったのか。。。 岸本さんによると、小穴の方には釘が打てなかったのではないか、とのこと。 小穴にはめられていた側の天井裏には、実は上部に軒がせまってきていました。台所にあるその天井部分の屋根には傾斜がついていて、天井裏の空間が狭くなっている。だから、釘を打とうとしても、ゲンノウが振り下ろしにくいのではないか。ということです。 つまり、屋根裏の空間が 傾斜によって狭くなっている方=小穴にはめ込む 十分空いている方=釘で打ち付ける ということになり、施工する立場から考えた「なるほど。」という予想だと思いました。 #
by ymsbkf
| 2006-09-05 18:27
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